法律解説

つながらない権利とは?2026年労働基準法改正で企業が備えるべき対応

スマートフォンとビジネスチャットの普及により、「勤務時間外でも仕事の連絡が来て休めない」という状況が常態化しています。本記事では「つながらない権利」の概念と、企業に求められる法的対応を解説します。

1. つながらない権利とは

つながらない権利(Right to Disconnect)とは、労働者が勤務時間外にデジタルデバイスを通じた業務上の連絡(メール・チャット・電話等)に対応しなくてよい権利のことです。

スマートフォンとSlack・LINE・メールの普及により、仕事とプライベートの境界が曖昧になりました。「一応確認だけ」「急ぎではないけど送っておく」という連絡が、受け取る側には常に「確認しなければ」というプレッシャーを与え続けます。これが慢性的なストレスとなり、燃え尽き症候群・うつ病・離職につながるとされています。

2. 海外の法整備状況

つながらない権利は欧州を中心に法制化が進んでいます。

  • フランス(2017年):世界初の「つながらない権利」法制化。50人以上の企業に対して、労使間でデジタルツール使用に関するルールを定める協定の締結を義務付け
  • ポルトガル(2021年):勤務時間外に従業員に連絡した上司への罰則を規定。10人以上の企業が対象
  • スペイン・イタリア・ベルギー等:労働法や省庁ガイドラインで類似の規定を整備
  • EU指令(2023年):EU全加盟国でつながらない権利の法的保護を求める指令を採択

3. 日本の法整備の動向

日本では2025〜2026年に向けて、つながらない権利に関する法整備の議論が進んでいます。厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」でもデジタル化に対応した労働時間管理の在り方が検討されています。

現時点では明確な法律はありませんが、以下の観点から企業の対応が求められています。

  • 労働安全衛生法:使用者は労働者のストレスチェックや健康管理に責任を負う。時間外の過度な連絡によるストレスも考慮が必要
  • 安全配慮義務:労働契約法第5条の安全配慮義務として、精神的健康に悪影響を与えるような環境を放置することは問題
  • 時間外労働管理:返信義務のある連絡は「労働時間」に該当する可能性。休日・深夜の連絡への対応を実質的に強制することは割増賃金の問題を生じさせる

4. 対応しない場合のリスク

  • 従業員の離職:Z世代・ミレニアル世代を中心に、ワークライフバランスを重視して転職を選ぶ傾向がある。時間外連絡の多さは離職原因の上位に挙げられる
  • メンタルヘルス不調:休みが取れない・プライベートを侵食される状態が続くとうつ病・バーンアウトのリスクが高まる
  • 採用競争力の低下:「休日もSlackが来る」という評判はSNSや口コミで広がり、採用ブランドに影響する
  • 将来的な法的リスク:法制化された場合、対応していない企業は是正指導・罰則の対象になる可能性

5. 企業が今すべき対応

法制化を待たずに、先進的な企業はすでにつながらない権利の保護に取り組んでいます。

  • 就業規則の整備:「時間外の連絡への対応は義務ではない」「緊急時の連絡は電話のみとする」などのルールを明文化する
  • 管理職への教育:「つながらない権利」の概念と、時間外連絡が与える影響について管理職研修を実施する
  • 連絡ツールの設定:Slackの通知スケジュール機能を活用して、就業時間外に通知が届かない設定を推奨する
  • 緊急度の定義:本当に緊急の場合の連絡方法と基準を定め、それ以外の連絡は翌営業日に回すルールを作る

6. テクノロジーによる実効的な対策

就業規則を整備するだけでは、実際の運用が難しいケースも多くあります。「ルールはあるけど上司から連絡が来る」という状況では、従業員が自衛するしかありません。

テクノロジーを使った実効的な対策として、就業時間外のSlack・Teamsメッセージを自動的に検知し、AIが緊急度を判定した上で、非緊急のメッセージを翌営業日まで保留するゲートウェイシステムがあります。送信側は普通に送ることができ、受信側は就業時間外に通知を受け取らない、という仕組みを物理的に実現します。

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